4つの「東」の話 〜ASC・天文学的EP・赤緯0度のEP・アンチバーテックスの違い〜
ホロスコープには「東」という概念が、実は4種類も存在することをご存知でしょうか?
ASC(アセンダント)、EP(East Point)、赤緯0度のEqA(Equatorial Ascendant)、AVx(アンチバーテックス / Anti-Vertex)──。
最近では、パソコンやスマートフォンの占星術ソフトでこれらのポイントが簡単に表示されるようになりましたが、「これが一体何を意味しているのか?」を理解しないまま使用されていることも多いようです。
しかしそれぞれの「東」の定義を理解することで、個人の行動、運命、そして魂の目的に関する微妙な違いが浮かび上がってきます。この記事では、それぞれの東の定義と意味を、天文学と占星術の両面から整理していきます。
前回、説明したアセンダントとイーストポイントの話は初級編、今回の話は上級編、プロとして完全理解したいという人向けです。
🌅4つの「東」の天文学的定義
名称 | 英語表記 | 天文学的定義 | 交差する基準面 | 説明 |
---|---|---|---|---|
ASC(アセンダント) | Ascendant | 地平線と黄道が交差する東側の点 | 地平線 × 黄道 | その瞬間に黄道(太陽の通り道)が地平線に昇る地点。出生時・場所によって変化し、12サインのいずれかに位置する。 |
天文学的EP | East Point | 地平線と卯酉線(真東西線)が交差する点 | 地平線 × 赤道 | 自分が立っている位置からあ真東に当たるポイント |
赤緯0度のEP(EqA) | Equatorial Ascendant | 赤道と卯酉線が交差する点を黄道に投影したポイント | 赤道 × 卯酉線 → 黄道へ投影 | 占星術ソフトStargazerやAstroGoldでEpと表示される、高緯度の場所では6室・7室などに入り得るポイント。東というにはちょっと微妙なポイントです。 |
アンチバーテックス | Anti-Vertex (AVx) | 黄道と天頂・天底を通る卯酉線が交差する東側の点 | 黄道 × 子午線直交線 | バーテックス(Vx)の対極。 |
🔭ホロスコープは2D、天文学は3D
通常のホロスコープは黄道12サインの度数を360度の円として描いた2次元の図です。
しかし天文学は、地球を中心とした天球上の3次元的な球面座標系で構成されており、
- 赤道(Equator)
- 黄道(Ecliptic)
- 地平線(Horizon)
といった複数の基準面が絡み合い、各「東」の定義が分岐していきます。
たとえば、ASC(アセンダント)は「地平線と黄道が交わる地点」ですが、これは季節によって太陽が昇る角度が変わるため、真東(方位90°)に太陽が昇るのは春分・秋分のみです。相対的に変化する東です。
そこで、「じゃあ変化しない真東とは何は?」と考えたときに出てくるのが卯酉線(ぼうゆうせん)=真東、天頂、真西、天底を結ぶ大円です。そして、そこに交差する3つの面が、2つのEP(East Point)とアンティバーテックスの3つのバリエーションを生み出します。
✨それぞれの占星術的意味合いと判断のニュアンス
① ASC(Ascendant) – 「個人の夜明け」
意味合い:
あなたという存在が地上に生まれ出る瞬間の象徴。
地平線から黄道が昇ってくるポイントであり、あなたのペルソナ(外界に見せる顔)や人生の出発点を示します。
キーワード: ペルソナ/自己表現/第一印象/外的特徴/人生の入口
解釈のニュアンス:
ASCのサインは「どのように世界と関わるか」、つまり外界へのアプローチスタイルを表します。
これは**意識的・無意識的に演じている“役割”**であり、社会的な「顔」のような存在です。
② 天文学的EP / 赤緯0度のEP(EqA) – 「普遍的な夜明け」
意味合い:
誰にとっても共通の「真東」を基準にした普遍的な始まり。
個人性よりも社会的・行動的な出力を象徴します。
キーワード: 行動力/外界への反応/社会との接点/純粋な発動
解釈のニュアンス:
EPは「何をどう行動として現すか」という自己の顕現のスタイルを示します。
ASCが「内側からの動機」であれば、EPは「実際に世界でどう現れるか」です。
高緯度で生まれた人ほど、ASCとEPのズレが大きくなり、「内なる自分」と「社会的な行動」にギャップが生まれることもあります。
③ アンチバーテックス(Anti-Vertex / AVx) – 「宿命の夜明け」
意味合い:
バーテックス(他者から引き出される宿命)の対極にある、自分の内面から湧き上がる抗えない衝動や、魂のカルマ的な覚醒点。
キーワード: 無意識の衝動/内的覚醒/カルマのテーマ/運命の変化点
解釈のニュアンス:
AVxは、ASCが示す「意識された顔」に対し、**普段は自覚できない“もうひとりの自分”**のような存在です。
このポイントにトランジットや進行天体が関わると、思いがけない方向転換や、運命的な気づきが訪れることもあります。
🔍判断を深める具体例
- ASC 魚座:優しく繊細で、受容的な印象を与える。
- EP 牡羊座:行動においては突発的で大胆。不思議と先頭に立ちやすい。
- Vx 乙女座/AVx 魚座:人生の転機には「細かく整理し直す」衝動が湧き上がるが、その裏には混沌の中から秩序を生み出したい魚座的本質がある。
このように、ASC・EP・AVxはそれぞれ異なる「私の現れ方」を象徴し、それらを合わせて読むことで、多層的で立体的な人物像を描き出すことができます。
🌌それぞれの「東」をどう読み解くか
種類 | 意識の階層 | 説明 | 象徴する起点 |
---|---|---|---|
ASC | パーソナル | 地平線 × 黄道 | この世に生まれた「身体・自我」 |
EP / EqA | 社会的 | 赤道 × 卯酉線(黄道へ投影) | 社会に向けた行動・発動 |
AVx | 魂的・カルマ的 | 黄道 × 天頂/天底の東西ライン | 内なる魂の扉、宿命的衝動 |
このように読み分けることで、
- ASC:この現実世界でのスタート地点(見える誕生)
- EP:社会的な活動や役割として現れる意志の方向(行動の軌道)
- AVx:目に見えない魂レベルの誕生と進化の扉
という3つの「東」が、異なる階層であなたを照らしていることが見えてきます。
✨サビアンシンボルでの応用も可能
これらの感受点にサビアンシンボルを適用することで、より深く象徴的な読み解きが可能になります。
とくにEPやAVxは、通常のパーソナルな感受点では拾いにくい「潜在的意図」「魂の起点」を探るのに最適です。
🔚まとめ
- ASC:あなたが世界に見せる「顔」。パーソナルな現実の東。
- EP/EqA:あなたが世界で起こす「行動」。社会的で普遍的な東。
- AVx:あなたの魂が内側で目覚める「衝動」。カルマ的・霊的な東。
どの「東」も、それぞれ違った角度から「あなたという存在と始まり」を照らしています。
現代のホロスコープ解釈においては、これらの違いを理解し、多層的に人物像を組み立てることがより精緻な鑑定に繋がるのです。
あなた自身、あるいはクライアントのホロスコープを読む際には、ぜひこの「4つの東」を意識してみてください。きっと、新たな発見と深い洞察が得られることでしょう。
占星ソフトの問題点としてEpがMc-Icラインを超えて右側にまで入り込んでしまうのは地球の地軸がが23.4度傾いているために起こる高緯度の特殊な場所でのことですが、夜が何日も続いたり、白夜という陽が沈まな時期があるという場所では、多くの人が住んでいる極地以外の人達とは違う生活がそこにはあるのだとも思えます。
このことは、ハウス分割のプラシーダスが高緯度帯では使いづらいという事に似ています。Epは使わないでAVxで判断するという割り切りも一つの方法と思います。まだまだこれから研究される分野の一つと思います。
気を付けてまとめたのですが、ここ変ですよというところがありましたらご指摘ください。よろしくお願いします。