アンティシオン(Antiscion)コントラ・アンティシオン(Contra-Antiscion)とは何か


目次

1. アンティシオン(Antiscion)とは何か

1.1 概要

  • アンティシオンは、日本語では「反影度(はんえいど)」とも呼ばれ、主にホレマンス(Hellenistic)や中世・ルネサンス期の占星術で用いられる「隠れた影の度数」を指します。
  • 太陽の位置(夏至点・冬至点の軸)を基準に、ある天体の表面上の度数(ecliptic上の度数)と対になる「影の度数」を求めることで算出されます。
  • 古典占星術では、アンティシオン同士が関係を持つ場合、「お互いを影の点で反映している=見えない親密性」を示すとされ、現代の占星術でも「隠された共鳴点」「深層でのつながり」を示唆する要素として扱われることがあります。

1.2 歴史的背景

  • ホレマンス占星術(紀元前2世紀~紀元後6世紀頃)は、天体の直接的なアスペクト(コンジャンクション、トラインなど)だけでなく、より微細な「象徴的・鏡像的な対応関係」を重要視していました。その一つがアンティシオンです。
  • ルネサンス期の占星術師たち(例:ブラハエウス、マニリウスなど)もアンティシオンの概念を取り入れ、書物に取り上げています。日本語文献ではあまり馴染みがありませんが、欧米の古典占星術書には詳しい説明があります。

2. アンティシオンの定義と計算方法

2.1 定義

  • アンティシオン度数は、「夏至点(蟹座0度)と冬至点(山羊座0度)を軸」に、ある天体の度数を左右対称に折り返した度数を指します。
    • 端的には、夏至軸(蟹座0度⇔山羊座0度)を中心として見た鏡像の位置です。

2.2 計算手順(最も一般的な方法)

  1. 参照軸を定める
    • 夏至点(蟹座 0°)、冬至点(山羊座 0°)の180°軸を「鏡映(ミラーイメージ)のライン」とします。
  2. 天体の度数を数値化する
    • たとえば、ある天体が「双子座 10°」にあるとします。星座を0~11までの数値に置き換え、度数に換算します。
      • 牡羊座:0°~29°(0~29)
      • 牡牛座:30°~59°(30~59)
      • 双子座:60°~89°(60~89) ・・・
    • 「双子座 10°」は、黄道座標で 60° + 10° = 70° に相当します。
  3. 夏至軸(90°)から距離を求める
    • 夏至点(蟹0°)は黄経で 90° にあたる。
    • 天体が 70° にある場合、夏至点からの距離は |90° − 70°| = 20°。
  4. 鏡像を取る
    • この 20° の距離を夏至点を越えて逆側に折り返します。
    • 90° + 20° = 110° がアンティシオン度数になる。
    • 110° は、「黄経110°」に相当し、これを星座度数に戻すと・・・
      • 牡牛(30°~59°)、双子(60°~89°)、蟹(90°~119°)。
      • 110° は 蟹座 20° となる。
  5. 星座座標として表記する
    • したがって、「双子座 10°」のアンティシオンは「蟹座 20°」 である、という結果が導かれます。

ポイントまとめ

  • 基準軸は常に「夏至(蟹0°=90°)⇔冬至(山羊0°=270°)」の直線。
  • もとの度数を夏至点までの距離でミラーリングし、その結果を度数に戻して表記する。

3. コントラ・アンティシオン(Contra-Antiscion)とは何か

3.1 定義

  • コントラ・アンティシオンは、アンティシオン度数を更に180°(半回転)ずらした位置を指します。
  • すなわち、「アンティシオンで求めた度数」からさらに天球を180°反転した場所がコントラ・アンティシオンです。
  • 英語では “Contra-Antiscion” として表記されることが多く、しばしば「対向反影度」と訳されます。

3.2 計算手順

  1. アンティシオンをまず求める
    • 例:前章の「双子座 10° → 蟹座 20°」がアンティシオンであれば、この度数を基に次を計算します。
  2. 180°ズラす(天球上で真反対にする)
    • 「蟹座 20°」は黄経で 110°。
    • これに 180° を加えて、110° + 180° = 290°。
    • 290° は、「射手座(240°~269°)、山羊座(270°~299°)・・・」の範囲に当てはめると、山羊座 20° となります(270° + 20° = 290°)。
  3. 星座座標として表現
    • よって、もとの「双子座 10°」のコントラ・アンティシオンは 「山羊座 20°」 となる。

ポイントまとめ

  • コントラ・アンティシオンは「アンティシオンからさらに180°反転させた度数」。
  • 結果的に、元の天体とコントラ・アンティシオンは「春分軸を挟んで反対側」という位置関係になる。

4. 意味と解釈

4.1 アンティシオンの象徴的意味

  1. 「隠された共鳴」
    • アンティシオン同士が関係を持つ場合、互いに直接的なアスペクトを形成していないにもかかわらず、「秘めた裏でのつながり」や「深層レベルでの共感」を象徴するとされます。
    • たとえば、個人のホロスコープで太陽のアンティシオンが他の天体と重なる場合、その天体同士が目には見えないレベルで相互作用していると読むことがあります。
  2. 「補完・鏡像の関係」
    • 外側からは見えにくいが、潜在的に互いを補い合う関係性を示唆します。
    • 通常のアスペクト(0°、90°、180°など)では扱えない微妙なつながりを表現するため、関係性の多層性を示す道具立てとして使われます。
  3. 古典占星術における応用
    • ホレマンス占星術では、「アンティシオンでつながっている惑星同士は、実際のアスペクトができていなくても、運命的・象徴的に作用し合っている」と見なされました。
    • たとえば「出生図でマルスのアンティシオンが金星のアンティシオンに近い場合、表面的には衝突関係がなくとも、深層でエネルギー衝突や情熱的な接点がある」と読むことがあります。

4.2 コントラ・アンティシオンの象徴的意味

  1. 「仮面の関係/阻害された影響」
    • コントラ・アンティシオンは「アンティシオンでつながった天体の裏側にさらに秘密裏の対向関係がある」と見ることができます。
    • アンティシオンが「潜在的な共鳴」を示す一方で、コントラ・アンティシオンは「その共鳴が外部に顕在化しにくい」「隠れた葛藤や裏返しのテーマ」を暗示します。
  2. 「隠れた葛藤・バランスの課題」
    • たとえば「太陽のコントラ・アンティシオンが冥王星のコントラ・アンティシオンにある」とき、個人の意志や自己表現(太陽)と深層欲求変容(冥王星)が、外からは見えない形で反目し合っている可能性を示唆します。
    • したがって、自己の表面上の動機と裏側に秘めた動機との間に緊張やズレが生じるケースとして読むことができます。

5. 実際の活用例

5.1 出生図(ネイタルチャート)での応用

  1. 隠れた相関関係を探る
    • 通常のアスペクトが形成されていない天体同士について、「アンティシオン同士が重なるか」を調べると、表面的には無関係に見えるが、深層レベルで連動している象徴を読み取れます。
    • たとえば、ネイタルチャートで「火星のアンティシオンと金星のアンティシオンがコンジャンクト」にあれば、表面上は火星―金星のアスペクトがなくても、“行動力(火星)と愛情・調和(金星)が深層でつながっている”と読めます。
  2. 裏テーマの浮上
    • コントラ・アンティシオンを調べることで、「本質的には同じサイン(度数帯)同士でも、鏡写しの裏側にある別の影響テーマ」が浮かび上がります。
    • ネイタルでたとえば「太陽のコントラ・アンティシオンが土星のコントラ・アンティシオンと重なる」場合、表面上は太陽―土星にアスペクトがないように見えても、“自己表現(太陽)を抑制・制限しようとする傾向(土星)が深層で存在している”と読むことができます。

5.2 トランジット(天体の通過)での応用

  • トランジット天体が自分のネイタルチャートのアンティシオンやコントラ・アンティシオンと重なるタイミングをチェックすると、
    • 一見アスペクトが形成されていなくても、深層的に影響を及ぼす可能性がある時期を察知できます。
    • たとえば「トランジットの天王星がネイタル太陽のアンティシオンと同じ度数になる」時期には、前触れなく突発的な変化が自我に及ぶ可能性がある、といった読み方がなされます。

5.3 プログレッションやプログレストチャートでの応用

  • 内的成長や変容を示すプログレッション・チャートでも、アンティシオンの重なりを確認することで、
    • 「表には出にくいが、自己成長の深層での転機」を象徴的に示唆するタイミングを見つけられます。

6. まとめ

  1. アンティシオン(反影度)
    • 夏至点(蟹0°)⇔冬至点(山羊0°)の軸を鏡に、ある天体の度数をミラーリングした「隠れた度数」。
    • 表面上のアスペクトでは表せない深層的・象徴的な共鳴関係を示す。
  2. コントラ・アンティシオン(対向反影度)
    • アンティシオンで求めた度数にさらに180°を加えた度数。
    • アンティシオンで示される“秘めた共鳴”が表面化しにくい、もしくは裏返ったテーマとして働く。
  3. 実用ポイント
    • ネイタルチャート:隠れた相関関係や内的動機の深層を読み解く。
    • トランジット/プログレッションチャート:他者や社会的出来事による潜在的影響を察知する補助ツールに。

アンティシオン・コントラ・アンティシオンは一見やや煩雑に感じられるかもしれませんが、「表面に出にくい深層のつながり」や「裏テーマ(陰影)」を読み取るための重要な手法です。実際のチャート解釈では、必ずしも必須ではありませんが、「古典占星術の知識を応用してより多層的なリーディングを行いたい」場合には、ぜひ導入を検討してみてください。

赤緯占星術的に考えると

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

40代半ばより占星術を研究しています。途中仕事や子育てと学童の父母活動で進まない時期もありました。HPも一度は閉鎖してやり直している途中です。2022年より占いを専業として活動を再開しています。これからも色々な発表の場で活動したいと思います。

目次